【訃報】水田洋会員ご逝去について
2023/02/06
本学会の創立から現在に至るまで日本18世紀学会の活動を支えていただきました水田洋会員が2023年2月3日、老衰のため名古屋市内の病院でご逝去なさいました。
水田洋先生は、軍国主義による知の閉塞の時代のなか若き学徒として学問を始められ、捕虜収容所の経験を経て帰国、戦後は、多くの同時代の世界的研究者と交流しながら、該博な学識と自由な批判精神をもって学界を牽引し、アダム・スミス研究を始めとする啓蒙思想研究など日本の社会思想史学の水準を国際的なレベルまで高められました。
先生の提唱された「思想の国際転位」という比較思想史的な学問的方法とアプローチは、一国の枠組みやひとつの専門領域に知を閉じこめるのではなく、たえず境界を超えて結びあい、ほつれあって拡がっていく「旅をする思想」の多層的で動的な交流・ネットワークの像にこそ、現代のアクチュアリティとも通い合う思想の活き活きとした営みを見出せるとするものでした。
水田洋先生の偉業を一貫しているこうした批判精神の発露と、国際的・学際的な変容と相互連関への強い関心は、私たち日本18世紀学会の学会としてのありかたのすみずみまで深く浸透している、精神的な水脈となっています。
先生の永年にわたる国内外の学界へのご貢献を偲びますとともに、本会として深く哀悼の意を表します。
2023年2月6日
日本18世紀学会